夜叉五倍子 / ヤシャブシ
ヤシャブシ、読めたでしょうか。私も染色に使うまで読めませんでした。
ヌルデの枝にはヌルデシロアブラムシが寄生して「虫こぶ」と呼ばれる、洋ナシのような塊を形成することが度々あるようです。
秋が深まりヌルデの葉が枯れるころになると、虫こぶも茶色く硬くなり殻を破ってアブラムシが飛び出す、このアブラムシが出た後の抜け殻は「五倍子」と書いて「ふし」または「ごばいし」と呼ばれています。
そこにはいわゆる渋の成分であるタンニンが豊富に含まれています。
ヤシャブシも、実にタンニンが多く含まれていることから関連してその名が付いたといいます。
ヤシャブシはカバノキ科ハンノキ属の落葉高木。日本固有種で西日本に広く自生しています。
同じカバノキ科の植物にはシラカバ、ハシバミ、イヌシデなどがあります。
2000年に火山が噴火した東京・三宅島では、堆積した火山灰の影響で木々が荒廃し枯れてしまいました。
島全体の60%近くの緑が消失したとも言われています。
そこで「パイオニア植物」として活躍したのがオオバヤシャブシ。
大気中から窒素を固定し痩せ地でも生育がはやいオオバヤシャブシは、荒廃地再生のための肥料木として三宅島に真っ先に植えられました。
20年という歳月を経て、今では山頂付近にも緑が蘇ってきているといいます。
そんな偉大なるパワーを持ったヤシャブシ、染色には実の部分を煮出し使います。
あら、かわいい。
マヒワがヤシャブシの実を食べに来ているようです。
別名「お歯黒の木」と呼ばれるヤシャブシですが、染色した布をじっくり見てみると、真っ黒ではなくやや茶色がかっていることが分かります。
優しい自然の色合い、深みのある黒といえるでしょう。
● ヤシャブシの花言葉…「おだやかさ」
こちらはあまり情報がありませんでした。
花らしい花が咲かないからでしょうか…。ヤシャブシの花は毛虫のようにもじゃもじゃとして枝から垂れ下がります。
● 色彩学からみる「黒」のカラーイメージ
すべての光を吸収する色、それが黒です。
黒色は「威厳」「不変」「頑丈」「強い意思」などを連想させるといわれています。
最も暗い色のため、主役を引き立たせ鮮やかに見せる効果があります。
周囲の干渉から逃れ、自身の安定を保ちたいときに黒色を取り入れてみてはいかがでしょうか。
〈参考文献〉
・朝日百科 世界の植物(朝日新聞社)
・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著(広川書店)
・カラーセラピーランド「色彩心理学」https://www.i-iro.com/psycholog(最終閲覧日:2021年2月14日)
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