手で織ること・草木で染めること

自然素材をつかうこと

 

mioriは、この3つにとことんこだわっています。

小さな工房内にある一台のはた織り機から、すべてはうまれます。

たて糸の黒のコットン糸をベースに、よこ糸には手つむぎコットン糸・シルク糸・ガラ紡糸など多種多様な糸を使用します。

織り上げた後に、草木染めによってよこ糸に色をつけていきます。


手つむぎコットン糸

インドの職人さんが手作業でつむいだオーガニックコットンを使用しています。

手つむぎ糸はその特性としてとても柔らかく、特別な加工をしなくても肌に吸い付くようなしっとりした布に仕上がります。

 

糸の太さにムラがありますので、ぷくぷくとした唯一無二の模様が浮かび上がります。

シルク糸

質の高い太さの均一な糸です。シルク特有のつややかな光沢があり、素朴な中にも上品さが感じられます。 

ガラ紡糸 

「ガラ紡」と呼ばれる日本独自の紡績機でつむがれたコットン糸です。

機械ではありますが、ゆっくりと丁寧に時間をかけてつむぐため、繊維に過度の負荷がかからず毛糸のようにふわふわ柔らかく仕上がります。 


手織りはたて糸を張る作業から始まります。その数なんと300本以上。

1本1本を綜絖(そうこう)や筬(おさ)と呼ばれる細い穴に通していきます。1本でも入れる箇所を間違えると始めからすべてやり直しです。

丸1~2日、たて糸のセッティングに時間を要します。

たて糸のセッティングが終わると織りの作業に入ります。1枚のストールを織り上げるのにかかる時間はおよそ1〜3時間です。

 

パタンパタンと規則正しく糸が整っていく様子は、同時に心も整い安らかになります。いつかあなたにも体験していただけたら…と考えています。

 

織る作業は両手と両足をリズム良く動かす全身運動です。微妙な感覚は体で覚えるしかなく、ある意味ではスポーツに似ているかもしれません。

 

たて糸の張り具合いや、よこ糸の性質を見ながら織る力加減を微調整します。

織り上がった後は端の処理です。フサの部分を一定の本数に束ねて結びます。キュッと結ばないと端がゆるくなったりするので、ゆっくり慎重に仕上げます。

 

その後、水通しをして縮絨(しゅくじゅう)を行います。縮絨は、布を熱を加えながら圧を加えることで、たて糸とよこ糸の交わりを強くすることです。織り目を整える意味でもこの工程は欠かせません。

 

 

これで生成り(きなり)状態の布の完成です。これから必要に応じて染色作業をしていきます。


絵の具を夢中になって混ぜた

あの頃のように

 

草木染めは、化学染料のなかった時代から行われてきた染色法です。人は色を出すためにさまざまな素材を試してきましたが、植物を使う染色全般を「草木染め(くさきぞめ)」と呼びます。

 

現在、mioriで使用している主な染料は以下のとおりです。今後もさまざまな染料にチャレンジしていく予定です。

クリック&タップで詳細ページに飛ぶことができます。

 植物がもっている色素をいただきますが、色素はそのままでは水に溶けて布に定着しません。そこで、アルミや鉄などの金属イオンを媒介させます。

 

基本的には草木を煮出して布を浸した後、アルミや鉄が溶けた水につけます。この作業を媒染(ばいせん)といいます。

mioriでは、よく染まる茜や夜叉五倍子でも最低3回は染めと媒染の作業を繰り返します。時間をかけて得られたものは深くまで浸透し、容易に色あせるものではありません。

 

媒染としての金属自体にも特性がありますので、使う金属の種類によって同じ染料でも多様にその色を変えることが面白味のひとつといえます。

上はクチナシ染め、下は夜叉五倍子染め。

どちらも左側がアルミ媒染、右側が鉄媒染です。その差は一目瞭然ですね。

 

基本的にはアルミ媒染は染料そのままの色を布に定着させやすく、鉄媒染は灰~黒色っぽく染まります。

 

近頃は「混ぜ色」も楽しんでいます。 

こちらは何色に見えるでしょうか?

 

藍は空気に触れると酸化して、みるみるうちに色が変わっていくさまがみてとれます。その、空気に触れる前の絶妙な色、すぐに移りゆく儚い色をなんとか布に定着させることはできないかと模索して生まれた色です。

 

ウコン染めで黄色に染めた後、うすい藍を重ね染めしています。

 

赤と黄を混ぜてオレンジに、赤と青を混ぜて紫に、ときには全色混ぜてみたり…。

小学校の美術の時間、誰もが一度は想いのままに絵の具を混ぜて遊んだことがあるのではないでしょうか。

 

そんなことが染色の世界でも出来るのです。

 

染料植物は1000~2000種、あるいは、すべての植物は染料になると言われることもあります。

その1つひとつの色は温度や湿度、濃度などそのときの染色条件によって多様に変化します。さらには使う金属によっても色が変わる、その色をまぜることも出来る、ときたら出せる色の数は天文学的な数字…もはや数え切れないほど無限に広がります。

 

絵の具を夢中になって混ぜたあの頃のように。可能性は無限大、そんな憧れに近い気持ちで日々手を動かし続けています。