茜 / アカネ
その特徴的な根っこから“赤根”とよばれ、転じて“茜”と名が付いたようです。
紅(べに)と並ぶ赤色の染料として有名で、人類最古の染料のひとつとして使われてきました。日本の国旗、日の丸の赤色も元はアカネで染められていたといいます。
「あかねさす~」この枕詞は誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
万葉集には「あかね」という言葉を含む歌が13首あることからも、古代から身近であり、大切にされてきた様子が伝わってきます。
夕日のような、少し黄が差し込んだような、艶めいた光を帯びた赤です。のっぺりとしておらず、草木染めでしか出せない絶妙な色味といえます。
「あかねさす」や「茜色の夕焼け」など色自体が有名になりすぎて、ご存知ない方もいらっしゃるかと思いますが「アカネ」は実は植物です。
アカネ科アカネ属のつる性多年生植物です。
同じアカネ科としてはコーヒーノキ、クチナシ、ハクチョウゲ、ペンタスなどが挙げられます。
アカネは世界の温帯・暖帯に広く生息し、その種類は細かく分けると50種以上にもなるといわれています。日本でも本州から四国・九州の山野や道端で容易に見かけることができます。
7~9月ごろ直径4mmほどの小ぶりの黄色い花を咲かせ、寒くなると地上部が枯れていきます。
染色に使われる主な品種は「西洋茜」「インド茜」「日本茜」。
なかでも日本茜は今やとても貴重な植物となり、草木染めで「茜」というと西洋茜またはインド茜がほとんどです。染料店でも日本茜は流通していません。
日本茜は西洋茜やインド茜に比べると色素量が少なく、栽培するにも手間がかかるため、近年では絶滅が危惧されるまでになっているようです。
1年目の根は黄色く、2年目からは黄赤色になります。
染色にはこの2年目からの根を使います。根を40~50分煮出した染料に布を浸してさらに煮詰めます。
mioriでは色素そのままの色が定着しやすいアルミ媒染をよく用います。アルミ媒染のコットンではピンクのような淡い赤色になり、より染まりやすいシルクでは夕焼けのような深みのある赤色に染まります。
生薬名は「茜草根(せんそうこん)」といいます。
主な効能は止血や利尿、黄疸や月経不順の改善といったものがあります。
中国のアカミノアカネ(Rubia cordifolia)を例にとると、吐血・尿血・子宮出血などの止血や去痰作用、打撲、慢性気管支炎にも効果があると伝えられています。
茎・根などを入浴剤としてお湯に溶かして利用します。
巻いているだけでも生理痛や月経不順予防に効果があるのでしょうか、昔は女性の腰巻きとしても茜の布は多用されていたようです。
● アカネの花言葉…「私を思って」「媚び」「傷」
ありゃりゃ。ネガティブな言葉が並んでしまっていますね。
西洋では黄色は「裏切り」や「異端」をあらわす色だとされているためでしょうか、はたまた止血作用から連想されるイメージでしょうか。
花言葉の由来は定かではありません。
● 色彩学から見る「赤」のカラーイメージ
赤色は「活力・興奮・情熱」といった内側から湧き出る強いイメージをあらわす色です。
赤いものに囲まれた部屋では体感温度が2~3℃上がるとの研究結果も報告されています。これは赤の光が交感神経を刺激し、体温や脈拍が上がり血流をよくするためと考えられています。
寒気を感じるときには、生命に直結する赤のアイテムを取り入れてみてはいかがでしょうか。
〈参考文献〉
・朝日百科 世界の植物(朝日新聞社)
・薬用植物学各論 木村康一・木島正夫共著(広川書店)
・植物分類表 大場秀章編著(アボック社)
・生薬単 原島広至著(株式会社エヌ・ティ・エス)
・カラーセラピーランド「色彩心理学」https://www.i-iro.com/psycholog(最終閲覧日:2021年2月14日)
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